一九四五年に生まれて 池澤夏樹 語る自伝
著者:池澤夏樹 聞き手・文:尾崎真理子 出版社:岩波書店
昭和20年7月7日、池澤夏樹は生を受けた。「敗戦後の年月がそのまま人生の時間」である作家。その80年の歩みから、「戦後」がありありと立ち上がる。父・福永武彦との数奇な運命、デビュー以前の長い猶予、ギリシャ、オセアニア、アジアの島々への旅、そして未来のために私たちがやるべきことは-。
「文学も平和も消耗品なんですよ。だから絶えず新しく作り続けなければいけない。」
気鋭の文芸評論家、尾崎真理子の巧みなインタビューに応えながら、池澤夏樹がいま初めて、人生と創作のすべてを明かす。
2025.9.4
だれが戦争の後片付けをするのか —戦争後の法と正義
著者:越智萌 出版社:筑摩書房
ロシアとウクライナの和平は実現するのか。実現したとして、真の平和をもたらすにはどうしたらいいのか。
新進の法学者が、戦争のあと、または途中から適用される国際法の規範や制度を紹介する1冊。
戦争犯罪の捜査・裁判、兵士の帰還、被害者への賠償といった戦後処理の実践を解説する、類のない「終戦後」論である。
戦争にかかわる法は、人類の歴史のなかで着実につくられてきた。21世紀に入り、「戦争後の法(ユス・ポスト・ベルム)」と呼ばれる概念が注目されている。
著者は、「研究の過程で戦争犯罪の悲しみに浸った私が感じた、一瞬の安らぎと希望を共有するために、「戦争の後片付け」の発展と未来について、できるだけ実際の事例を紹介しながら記述したい」と語る。
2025.9.1
マンションポエム東京論
著者:大山顕 出版社:本の雑誌社
「ときめきをシェアする摩天楼」「女神は輝きの頂点に舞い降りる」
こうしたマンションの広告でよく見られる、物件のスペックをわかりやすく伝えるのではなく、雰囲気を詩的につづることを優先した文言を、著者は「マンションポエム」と呼ぶ。
本書は、マンションポエムを通して、私たちが都市、特に東京をどのように見ているかを浮かび上がらせる都市論的エッセイだ。
空と緑の都市に咲くあだ花か、アーバンライフの幻想か。マンション広告のコピーに託された〈東京〉の正体を読む。
2025.8.30
夜、寝る前に読みたい宇宙の話
著者:野田祥代 出版社:草思社
私たち人間は、ついささいなことで落ち込んだり、イライラしたり、目の前の現実に一喜一憂しがちです。とりわけ今は心理的にもストレスが大きい時代で、心穏やかに日常を送ることが難しくなっているという方が増えているのではないでしょうか。
そこで本書は、夜、寝る前のほんの一時、遠い宇宙に思いをはせ、「宇宙からの視点」で、地球や私たち人間を俯瞰することで、煮詰まってしまった心を解きほぐし、静かに「自分」を見つめ直すことを促すものです。
何か困った問題が起こったら、一呼吸して「心だけ宇宙に緊急避難」する。大きさも時間の流れも“マックス”の宇宙からの視点で見てみれば、1人ひとりの人間の存在が、いかにかけがえがなく、はかなく、そして愛すべきものだということがわかるはずです。
読みながら、宇宙誕生から現在にいたるまでの悠遠な時の流れを体感することで、私たちが本当に大切にすべき「あたりまえの日常」に気付かされることでしょう。
この本は、宇宙について興味はあるけれど、科学知識があまりないという方も気楽に読めるよう、全編にわたり平易な表現が使われています。
もれなく宇宙の基礎知識も身に付きます!
2025.8.28
帰れない探偵
著者:柴崎友香 出版社:講談社
今から10年くらいあとの話。
「世界探偵委員会連盟」に所属する「わたし」は、ある日突然、探偵事務所兼自宅の部屋に帰れなくなった。
急な坂ばかりの街、雨でも傘を差さない街、夜にならない夏の街、太陽と砂の街、雨季の始まりの暑い街、そして「あの街」の空港で……「帰れない探偵」が激動する世界を駆け巡る。
『続きと始まり』『百年と一日』が話題の柴崎友香による全く新しい「探偵小説」
2025.8.25
この国のかたちを見つめ直す
著者:加藤陽子 出版社:毎日新聞出版
歴史家の仕事とは
戦後80年――今こそ歴史を振り返り、あるべき国家と国民の関係を考える。
日本近現代史の泰斗が、国家と国民、東日本大震災、天皇と天皇制、戦争の記憶、世界と日本、そして日本学術会議会員任命拒否問題を論じる。戦後80年を前に、国家と国民の関係が大きく揺れ動いている。危機の時代とも言うべき今こそ、その関係を国民の側から問い返し、見つめ直すことが必須となる。
話題のベストセラー、新たに9編を増補し、待望の文庫化。
2025.8.21
仮説の昭和史 戦前・日米開戦編/戦中・占領期編
著者:保阪正康 出版社:毎日新聞出版
もし、あの時……ならば、日本は変わった!?
現代に至るその後の日本のかたちを決めた昭和史の決断を仮説で検証。空想・虚構ではなく起こり得た仮説を立てて考えてみることで、昭和史の実像がより鮮明に見えてきます。
戦前・日米開戦編:
もし、五・一五事件の決行者が厳罰に処されていたら軍部の政治介入は防げたか/二・二六事件に際し昭和天皇が直接鎮圧部隊を率いていたら/中国での日本軍の蛮行を国民が知ったなら/ルーズベルトの和平を願う親電が早く昭和天皇に届いていたら……。
戦中・占領期編:
もし、米軍のガダルカナル島上陸を本格的な反攻の始まりと日本が認識していたら/レイテ湾へ栗田艦隊が突入していたら、マッカーサーは戦死していたか/昭和天皇のバチカン和平工作が成功していたら/二・一ゼネストが決行されていたら/日本語のローマ字表記が強制されていたら、日本はどうなった?
2025.8.18
昭和期の陸軍
著者:筒井 清忠 出版社:筑摩選書
現代人に必須の知識である昭和史。だが昭和の戦争・軍隊とりわけ陸軍の歴史については、少なからぬ間違いを含んだ書籍が広く流通しており、正確な叙述による理解が求められている。本書は、長年にわたり昭和陸軍史研究をリードしてきた著者による、信頼できる昭和陸軍史論集。大正時代の陸軍の考察から始まり、昭和陸軍の派閥抗争史、二・二六事件の真相とその研究史など、昭和陸軍の理解に不可欠な論考を収録。昭和戦争史のブックガイドまで完備した、昭和史理解に必携の一冊。
2025.8.16
せんそうがおわるまで、あと2分
著者:ジャック・ゴールドスティン 訳:長友恵子 出版社:合同出版
第一次世界大戦の停戦わずか2分前に戦死したカナダ人兵士がいたのを知っていますか。
実際の出来事から着想を得て作られた、シンプルなメッセージが深く心に残る絵本です。
ジュールとジムは、同じ日に同じ村で生まれた幼なじみ。
ジュールより2分早く生まれたジムは、いつもジュールより速く、強く生きてきました。
第一次世界大戦がはじまり、2人は兵隊に行きます。
しかし戦場は壮大で輝かしいものではなく、泥まみれでみじめなものでした。
いよいよ戦争をおわらせることは決まりましたが、11月11日11時、その時までジュールとジムは戦場へ出向くことを命じられます。そして――
2025.8.14
「争い」入門
著者:ニキー・ウォーカー 訳:高月園子 出版社:亜紀書房
対立、紛争、戦争の「しくみ」、そして「平和」について。
小学生から大人まで、誰にでも必要な基礎知識がこの一冊に。
世界ではいつもどこかで、紛争や戦争が起こっている。だから「争い」は人間にとってさけられないことだと思いがちだ。でも、この本を読めば、人間は、平和についても不断の努力をつづけていることがわかるだろう。
どうして人と人、国と国同士で「争い」が生まれるのか?
──まずは〈構造〉をしっかりと見つめて、「争い」を乗り越える目を養おう。
2025.8.11
敗戦日記
著者:渡辺 一夫 編:串田 孫一・二宮 敬 出版社:ちくま学芸文庫
日本が敗戦へと向かうなか、フランス語で綴られていた日記。そこには国家への絶望と希望の間で揺れ動く知識人の生々しい声があった。
「この小さなノートを残さねばならない。あらゆる日本人に読んでもらわねばならない」。敗戦へと向かうなかで綴られた日記。分量は45頁ほど。1945年3月11日から始まり、大部分はフランス語で書かれている。そこには、一人の文学者がいかに苦悩し、いかに正確な判断を下そうとしていたか、生々しい声が記されていた――。本書は、日記全文の翻訳に、串田孫一宛書簡と関連の文章15篇を加えたほか、戦後数カ月分の日記も収録。日記の原文は口絵に収められている。
2025.8.9
一銭五厘たちの横丁
著者:児玉 隆也 写真:桑原 甲子雄 出版社:ちくま文庫
桑原甲子雄が撮影した留守家族たち、出征してその写真を受け取った横丁の兵士たちの戦中・戦後を記録した、1975年刊行の傑作ルポが、戦後80年を機に復刊。
戦時中に桑原甲子雄により撮られた「氏名不詳」の人びとを探して、著者は、戦後30年を前にした東京・台東区の下町で、ひたすら露地を歩き、家の戸をたたいた。そうして探し当てた彼らが語ったのは、戦場と横丁、それぞれに降りかかった「戦争」だった。写真の留守家族たち、一銭五厘のハガキで出征した横丁の兵士たちの戦中・戦後を記録したルポルタージュの名著。
2025.8.7