山と海のはざまに暮らす幼子みっちんは、盲目の祖母「おもかさま」、“挨拶のよい”大男の孤児「ヒロム兄やん」、いつも懐に犬を入れた「犬の仔せっちゃん」ら、人の世の片隅で生きるものたちに導かれ、にぎやかな土地の霊と交わってゆく。しいたげられがちな人こそが「よか魂」をもち、魂のよい人間ならば、神さまと話すことができるのだという世の神秘が、あたたかみある熊本方言とともにつづられてゆく。
『苦海浄土』で知られる石牟礼道子さんが、もともと福音館書店の児童文学雑誌に連載した作品。このたび河出書房新社より文庫として刊行されました。
石牟礼さんがふるさと水俣の美しい自然と心よき人々に囲まれた幼時の記憶から綴った『椿の海の記』と対をなす傑作です。